最近ipadで本を読むことが多い。
ibookの無料本で夏目漱石を数冊読んだあと太宰治と芥川龍之介を読んだ。
私は高校生の頃、太宰治の『斜陽』を読んで太宰ファンになったのだが、今読んでみるとそんなにいいと思わなかった。
今回さくっと読んだのは『富嶽百景』『恥』『グッド・バイ』『火の鳥』で、
『富嶽百景』以外はどうも気障で自己愛の塊みたいで好きどころかちょっと嫌悪感さえ感じた。高校生の頃は良かったと思っていたのに不思議なものだ。
太宰はきっと世の中や家族の血のつながりが嫌で死にたい死にたいと思っている少年少女にとってはバイブルのように思え、そういうことを通り越して生き残った大人にとってはどうも愚痴っぽくて嫌な気分になる。
対して芥川龍之介は今の方が良く感じた。
大学の卒論で宇治拾遺との絡みで『地獄変』を使ったがそれ以外の作品の記憶はあまりなかった。
適当にピックアップして『影』『おしの』『或阿呆の一生』『蜜柑』『歯車』『お富の貞操』『奉教人の死』を読んでみたのだが、どれも良かった。
『蜜柑』はおそらく高校大学あたりに読んでいたらこの良さが分からなかったんじゃないかな。ガツンとくる良さではなく、じわじわくる良さというのは大人になってからの方が分かる。
似ているタイトルで太宰の『桜桃』や梶井基次郎の『檸檬』があるが、私は当時は『檸檬』が好きだった。精神を病んでいる絵かきの男というのに自分を重ねたのだ。しかし今読んでみると断然芥川の『蜜柑』がいい。すごく短い作品だけど完成度が高いと思う。
芥川は文章がうまくて頭がいいんだなぁと気付いた。それに大人な感じがする(苦笑)。太宰は子供。
『影』も良かった。斬新なミステリーホラー。びっくりするくらいすごいなぁと感心してしまう。なんかどこかで同じようなものを読んだか見たかしたような気がするが、気のせいかもしれない。
夏目漱石は『こころ』(←これは前に感想を書いた)『三四郎』『それから』『夢十夜』を読んだ。何度も言うが、本当に夏目漱石はすごい。天才だと思う。
堅苦しくなく、生き生きとして、目の前に漱石の書くその世界があるように感じる。
人も町も今なお生きている。全然古い感じがしない。
状景描写が多いという感じがないのに、町の喧噪が聞こえ、色は鮮やかに、匂いまで香ってくる瑞々しさがある。映画を見ているような感じがある。
私はとくに『こころ』と『夢十夜』が良かった印象。今読んでいる『硝子戸の中』もいい。