『海炭市叙景』も『移動動物園』もそうだが、佐藤泰志の文章は不思議な魅力がある。ひんやりとしていて、物悲しくて、切なくなる。
私は時々の状景や心情を表した一文がすごく効いていると思う。たとえば、"街路樹の影は濃く、青みがかっていた。夏でなければ影はそんなふうには見えなかった。p249 " とかいうような。花や果物の香り、気温、そういうものも効果的だと思う。何も起こらないただの状況描写を作品にしてしまうのだから、すごい。
『きみの鳥はうたえる』は、そういう結末になるのか、と驚愕する話だった。
次は『黄金の服』