鉄道開発を背景に
日本を流れた
百年の時間を描く
著者最高傑作。
と、帯にあります。確かに「鉄道についての歴史と百年の間の物語」でした。
でも、「電車道」というほど鉄道開発の話というわけではありません。私としてはもっと鉄道に沿ったの方が知らない事を知る楽しみがあってよかったように思います。
途中、ねじめ正一さんの『荒地の恋』を読んでしまい、そちらがものすごく良かったので、戻って来てから何だか物足りなく感じました。『荒地の恋』が実在の詩人・北村太郎の本だったので、『電車道』の人物たちが薄っぺらく感じました。
その前には滝口悠生さんの『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』を読んでいて、こちらが作家の伝えたい思いが情熱を持って溢れていたので、『電車道』の淡々とした物語が物足りなく感じてしまいました。
電車が走り始める頃からの百年の間の話、という意外に何もないのです。
何人もの登場人物が少しずつ繋がってはいるのですが、そこに意味があるわけでもなく、言うほど電車と関係もない。
何というかバラバラとしている感じでした。
文章が読みやすく丁寧なので、面白く読めましたが、私は先の2作の方が良かったです。
鉄道会社を興す男の話は小林一三を思い出しました。