2010/10/20

『エクスタシーの湖』スティーヴ・エリクソン(筑摩書房/越川芳明訳)


読了。これもすごく面白かった。
この本は『真夜中に海がやってきた』に続く形をとるので、先ず『真夜中〜』を読むことをおススメしたい。
主人公も同じだし、前作の終わりからの続きの物語だし、他の登場人物や過去もそのまま投影されているから。

それからこの本の面白いところは、文章のレイアウトにもある。
段落、標準体と斜体、ページの使い方、文字組み、言葉の見せ方にすべてこだわっている。そうして全体で物語をつくり上げているところがとても興味深い。

水から掬い取った言葉を、










というように、まるで泡のように表現したりする。



この本は、女性の方が興味深く読めるような気がする。
<産道うんが>というキーワードがあり、カオスというキーワードがあり、
前者の指す命の連鎖と後者の指す命の喪失と、人間と世界と自然を渾然一体となした物語を、子供を護る母親を主人公にして描いているから。
生命の源は女性の子宮。赤い血、赤い狂気。喪失する青。

エリクソンの小説は、いつも私の創作意欲を駆り立たせる。またあとで読み直したい。


文中の引用メモはこちら→http://yomuxmemo.com/user/2389