「清流譜」は「瀧井孝作全集」の月報に12回連載されたもの。そのほかに「海」に掲載された「潮来」「神田連雀町」「佃島薄暮」という続きものの小説が収められている。
島村さんの書き物には瀧井孝作さんと志賀直哉さんがよく登場する。しかし私はどちらも読んだことがない。志賀直哉はさすがに小中学生のころに読んではいるけれど、全く覚えていないから読んだことがないに等しい。いつか読まなくてはとは思っていても、なかなか有名どころの作家に手が出せない。
滝井さんの方は読んだことのある人に聞いてみたら俳句の人だからかごつごつしていると聞き、さらに島村さんの作中に滝井さんの文章の引用があってそれを読むと確かにごつごつした感じと読みにくさがあったので、滝井さんも当面読むには至らない気がする。
でも、島村さんの本を読んでいると瀧井孝作と志賀直哉は読みたいという気にさせられてしまうのは、島村さんの文章がいいからなんだろう。
島村さんの文章はやっぱり好きだなぁと思う。小説ではないエッセイ風の「清流譜」もやっぱりちゃんと島村さんで、いい。
何がどう良いのか説明ができないのだけれど、なんかいい。やさしくて、静かで、さやさやしている。たっぷりの水で溶いた若竹色や勿忘草色みたいな文章。