木村紅美さんは初めて読み、別のも読んでみたいと思った。
とはいえ、感想となると難しい。
何て言えばいいのだろう?
いろんな要素がぐぐぐっと詰め込まれている感じがして、感想としてうまくまとめられない。
ちょうど梅雨入りした、こういう曇天の日に読むといいと思う。快晴は似合わない。そういう感じ。
夜の月を見上げて、何を考えるではなくぼんやりと見詰めているとき、心に何かを感じる、そういうような印象。
帯には
<実存的生を描き切った、静かに読者を襲うまったく新しい純文学>とある。確かにそういう感じでもある。こういうトーンの小説は好き。
純文学とあるけれどこ難しい感じはなくあっというまに読めてしまう。
じわじわと暗い気分になった。心に穴を開けられたような感じがした。でも暗い気分になったり心許ない感じになったのはただ実際の天気が悪いせいかも知れない。
人々がリアルで良かった。人ってこんなもんだよなと思う。
人は脆い。だから現実から逃げる。だから何か拠り所を求める。
逃げないと生きていけなかったり、もう生きることさえ放棄したりする。
簡単な事でこれまでが壊れてしまうこともある。後ろめたさや居心地の悪さは人を別の人にしたり別の場所に追いやったりする。
人の優しさや親切、人と人はかかわり合ってしか生きていけないということ、そういうものを拒否して踏みにじる主人公。
軽薄で自分勝手なこの主人公のことをダメな人はダメだろうと思う。そうなるとこの本を読むのはしんどいかもしれない。
でも私は割と分かるところが多かった。それに、何となく、主人公は人物像というより観念のような、人の心にある何かの形のような感じがした。うまく言えないけど何かというのは生への執着のようなもの。彼女が生そのものを体現しているのだろうか?
考え過ぎてわけが分からなくなってきた。
私は結構好き。良かったと思う。
それにしても、木村紅美さんは1976年生まれで私よりも若い。そういうのを知っちゃうとすごいなーと褒めたくなってしまう。