2012/12/12

『海の匂い』芝木好子(集英社文庫)


出かけるときに家から本を持って出るのを忘れて、途中の本屋で買った。
表紙の絵がいいなぁと思って買った。久しぶりのジャケ買いである。

片山廣子さんを読んだすぐ後だったので読みやすかった。
しかも片山さんと同様(というか片山さんよりはるかに)芝木さんは死の匂いがする。

芝木さんの作品は死の匂いだけでなく朽ちていくもの、滅びるものの世界を描いている。
加えて強さと弱さと孤独。

こう書くといかにも暗そうに聞こえるけれど、決して暗い重いというのではない。静かに、ひっそりと、そういう空気が流れている。

朽ちていくものや滅びゆくもの、死や孤独、そういう題材は私自身が描く題材と共通しているので、とても読みやすかった。
「家の終り」を読んでいる時などは創作意欲が湧いた。

私は「家の終り」と「下町の空」と「有明海」がとくによかった。