何となく、これまで読んだ桜木さんの感じとは違った。
相変らず桜木さんの小説は暗いのだけど、今回のこの『それを愛とは呼ばず』はいつもにまして暗い。そして重くて、とにかく怖い。暗い、重い、怖いという小説。
これまでの暗さはそれでも澄んだ水のような感じがした。キンとした冷たさ、底が見えるほどの透明感、星の光を反射させてキラキラと揺れて輝く水面。
でも今回の暗さはずしんとくる。垂れ込めた低い雲、なま暖かくまとわりつくような空気、血や土や消毒液などのイヤな臭いがする。
それだけ桜木さんという作家がすごいということでもある。いや、本当に、すごい作家さんだと思う。
私は『氷平線』の方が好きだけれど、『それを愛とは呼ばず』はすごい作品だと思う。前半、読みはじめた時は「桜木さんぽくないなぁ。あんまり好きじゃないなぁ」と思ったけれど、後半はすごい。どんどん暗くなって重くなって怖くなる。
しかし、本当に怖い話だった。あっという間に読んでしまったのだけど、あまりの暗さと重さと怖さに、読み終えてから私の精神が悪くなってしまって動悸と目眩を起して慌てて精神安定剤を飲んだくらい。
心の弱っていないときに読むことをおススメします(苦笑)
装幀が素敵。好きです。