これはこれまでに読んだエリクソンとはだいぶ違った。
この時期の作家に何かがあったのだろうかと思わざるを得ないような、自伝的要素を感じてしまう作品。
正直、これを最初に読んでいたら私はエリクソンの他の作品を読んだかどうかわからないし、エリクソンという作家を今のようには思えなかっただろうと思う。
ただ、この本のあとがきに訳者の柴田さんがとてもいい文章でエリクソンのことを表しているので引用しておく。
まず、僕にとって、エリクソンによるつまらない文章、というのはほとんどありえない。万一かりに、少し冗長ではないか、焦点が定まっていないのではないか、と思えるときでも、エリクソンの文章は、頭で操作するのではなく精神の奥底から言葉を引き揚げてくる人(と、あくまで僕には感じられる、ということなのだが)固有の強さ、烈しさがつねにみなぎっている。もしかしたら下手に書くことはありうるかもしれないが、力なく書くことは絶対にない人である。(p260)
私も柴田さんの感じていることに同感している。