本を読んでいる時や絵を描いている時や仕事をしている時、空中に浮遊している悪玉をパクリと食べてしまったみたいに唐突にどうしようもない感情に襲われる。その塊はスポッと鳩尾の辺りに入って来て、私の行動は停止して頭が空っぽになる。そして悲しくて恋しくて仕方がなくなってしまう。
以前から何度も同じような事を書いてきた。突然やって来る悲しさと恋しさ。
無性に悲しくなって、心がひりひりするくらい恋しくなって、涙が勝手に出て来る。
苦しくて苦しくてどうしていいのかわからなくなる。
恋しいのなら誰かに会って話でもすればいいと言うかも知れない。でも私はそれがうまくできなくて、ついつい独りでぐっと堪(こら)えたりじっと堪(た)えたりしてしまう。本当は抱きしめて欲しいのに抱きしめて欲しい人が傍にいないから尚更悲しくて恋しくなってしまう。私は単純な人間だからそれさえあればすっかり元気にすっかり幸せになれるのに。
こういうのがずっと続くと(続いていることに因るのではなく有ること自体に因るのだが)生きていくことを諦めてしまいそうになる。
気持ちが擦り減って疲れて、もう無理だと思ってしまう。
でも、死ねないし死にたくもない。
どんなに悲しくて恋しくて苦しくても『無』になる恐怖よりはずっとマシだと思うから死にたくない。
死ぬのはイヤで怖くて生きたいと思うのに、もういいやと諦めてしまいたくなる。
わんわん泣いて二つの気持ちの間で葛藤する。
と、こうして胸のうちを書いていると(いつもは公にしたりはせず日記帳に書いている)徐々に普通に戻って、本を読もうと思ったり仕事に戻ったり出かけようと思ったりとにかく何かできる状態になる。また次の悪玉を食べてしまうまでの間だけど。