2013/09/25

『蒼白き巣窟』室生犀星(青空文庫)

青空文庫からダウンロードをして、ipadminiで読んだ。

電子書籍では『カラマーゾフの兄弟』を読んでいるが、普段本で読むような作家の作品を電子書籍で読むと違和感があった。
旧字旧仮名遣いの小説は、やっぱり紙の本がいい。

紙に印刷された文字は味わい深いのに、電子書籍になると味気なくなる。
室生犀星みたいな作家の作品は断然本の方がいい。

有名なベストセラー小説で旧仮名じゃないものとか、海外ものとか、実用書的なものは電子書籍でもいいように思う。
使い分けが必要だと実感した。
こうなってくると、本というのはただ文字を読むのではないと分かる。「本」というひとつの作品なんだと改めて思う。

もちろん小説自体はさすが室生犀星だった。淡々としているのに奥深い。
だらだらと毎日を過ごしている書生は蒼白き巣窟(=浅草十二階下の私娼窟)へ通う。そこで働く娼婦と、公園で客をとろうと声をかけてきた素人女と、2人の女を通して自らの生活を考え読者に生きるための生活を考えさせる話。

娼婦おすゑの人柄が気に入った。これまで読んだ室生犀星にこういう人はいただろうか。
明るく前向きで裏表無く素直で私は好きだ。

2013/09/18

『假靣』高見順(⾭龍社 1947年)


ブクログに載せようと思ったのにこの本はなかった。Amazonにもなかったから珍しい本なのかもしれない。
假靣という字も簡単には出てこない。何せ表題が右読みなくらいだから仕方がない。

以前に新潮現代文学で高見順さんの『いやな感じ』と『死の淵より』を読み、とても良かったが、この『假靣』もすごく良かった。やめられなくてずんずん読んでしまった。

どこもかしこも引用に値する。
高見順さんの考え方は私にはとても共感することが多い。人間というもの、生きるということ、そういうなかなかに難しいテーマを読みやすく描き出している。

あとがきで高見さんはこう書いている。

一、終戦後の風俗を背景にしながら、背景はそつちのけで、終戦後の心の風俗に筆が強く傾いてをりますところのこの小説は、読み返してみますと、観念的な感じなのが反省されましたけれど、後からの補筆も、背景の塗り直し書き足しという方には、とんと動かないのでありました。私はかうした観念的な小説を書くことが、そしてこれからもかきつゞけることが、そしてそれを一度通ることが、この私にとつてはどうしても必要なのだと思はれます。

高見さんが自分で言うように、この小説は、背景の描写で読ませるという小説ではなく心の描写で読ませる小説である。そしてその心というのは戦後だろうが現代だろうが同じである。いまの若い子たちだってきっと共感すると思う。誰だって仮面をかぶる。

弱くて、矛盾していて、相反する感情を持ち、卑屈になったり、虚勢をはったりする。
自分を憎むこと、自分を庇い立てすること、仮面をかぶること、そういうことはいつの時代にもあることだ。
人間というのは66年くらいで変わるものではない。

ふたりの女性もいいアクセントになっている。自分しか愛せない女と、自分を愛せない女。
他の登場人物もみなそれぞれの役割を担って描かれている。
すべてにおいて本当に良く出来た、いい小説だと思う。


2013/09/16

『雪の練習生』多和田葉子(新潮社)



おもしろかった。
いしいしんじさんにちょっと近いように感じる。

シロクマが人間のように生活しているというと、かなりのファンタジーなはずなのに、絶妙なバランスで構成されていてファンタジー作品にしていない。ものすごく計算されて考えられて作られていると思う。
多和田葉子さん、読んだことなかったけどすごい作家さんだ。

シロクマ3代の話と言っても、3つの話の書き方(シロクマの在り方)はそれぞれ異なっている。
初代「わたし」は作家として、人間と同じように生活している書き方で、これだけがファンタジーっぽい。
しかし娘「トスカ」と孫「クヌート」はご存知の通り実在のシロクマで事実に沿った物語になっている。

サーカスにいた「トスカ」の話は実際トスカとサーカスで一緒だった調教師の女性ウルズラが語る形をとる。『死の接吻』という芸も実際にふたりで行なっている。

「クヌート」の話はシロクマとしてクヌートの目線で描かれている。
クヌートの飼育員だったトーマスさんが2008年に急逝したことでこの話が浮かんだんだろうか?(初出は2010年10月〜12月の「新潮」)クヌートがトーマスさん(作中はマティアスさん)に最大の愛と感謝と尊敬を表している。
実際のトーマスさんとクヌートふたりのあの仲の良い姿を見ていれば、物語はリアルでありながらそうあって欲しいという願いの空想でもある。
トーマスさんがいなくなった淋しさでクヌートは死んでしまったんじゃないかと思えてくる。


 そのことも新聞で知った。マティアスが心臓発作で死んだ。死んだと言うことの意味が初めはぴんと来なかったが、何度も読んでいるうちに、もう絶対に逢えないという岩の塊が脳天に落ちてきた。もちろん、もし生きていても、もう二度と逢えないのかもしれない。でもひょっとしたら逢えたかもしれない。ひょっとしたらと思いながら生きていくことを人間は希望と呼んでいる。その希望が死んだ。(「北極を想う日」p231より)


中のデザインの方が好き。
なんとなく私にはドイツっぽく感じるし、物語にも合う気がする。


2013/09/14

大切な友人の結婚式


大好きな友人の結婚式に出席してきた。

私はウェルカムボードを作った。
大好きな彼女にウェルカムボードを作って欲しいと依頼をもらって、私が彼女を好きなように彼女も私を好きでいてくれていると勝手に思って嬉しくなって、彼女の心配りに応えるようなものを、私が彼女をどんなに大切に思っているか伝わるようなものを作ろうと思った。
何枚もやってようやく納得いくものが描けた。既存のウェルカムボードのイメージに引っ張られたり、やってみたいことがどんどん湧いてきたりで何枚も描くことになってしまったが、最終的にはよしと思えるものが出来てよかった。
本当の完成品となる花を飾り付けた状態のものを撮り忘れてしまった。花を飾るともっとウェルカムボードらしくなる。



彼女のまわりにはたくさんアーティストさんがいるので、私以外にもたくさんの友人がそれぞれの分野で結婚式に参加していた。
珈琲店の友人は引き出物に珈琲を、その奥様は画家さんなので珈琲の箱にひとつづつ版画を、料理人の友人は帰りに渡すお菓子を、カメラマンさん、フリーアナウンサーさんetc...。
アートで町おこし的な活動をしている彼女の引き出物は地域の色の出たもので、彼女の素晴しさが出ていると思う。

引き出物その1)岐阜県美濃加茂市にあるコクウ珈琲のコーヒー。
箱の内側の絵はコクウ珈琲の奥様オリジナル。シルクスクリーンでひとつひとつ手作り。



カラフルでかわいいクッキー

引き出物その2)郡上マニアと名前のついたギフトセット。
石鹸2個+受け皿とてぬぐい。


引き出物その3)こちらも岐阜県のお店。3種類のかりんとう。

2013/09/09

『タタド』小池昌代(新潮社)


眠れなくて読み始めて、睡魔が来る間もなく数時間で読み終えてしまった。

淡々としたテンションの低めな感じは桜木紫乃さんと似ているようにも思う。しかしこちらは東京が舞台だから実際は似ているようでまるで似ていない。

『タタド』『波を待って』『45文字』の三編が収められていて、私は三つ目の『45文字』が好き。私はやっぱり主人公は男性の方が読みやすい。

小池さんの物語の設定はどれも変わっていておもしろい。
「あり」そうで「ない」、「なさ」そうで「ある」、そういう感じ。
どれも死の匂いが漂っていて、それは同時に生きるということでもあって、そういうところが「突拍子もない話」にさせないでいるのだと思う。
ありそうでなくてなさそうでありえる現実の側に物語が引き留められている。

2013/09/08

『酔郷譚』倉橋由美子(河出書房新社)



続いて倉橋由美子さん。

私はこれはちょっと微妙だった。

大金持ちの美男子、彗(すい)君が魔酒という酒を飲んで現実の世界と別の世界とを行き来するという話なんだけど、何というか、私はピンと来なかった。

突拍子すぎるというか、その不思議な世界の描写にも良さを感じないというか、とにかく何というか微妙だった。

それでも読んでいくうちに馴染んできて、徐々にスムースに読めるようにはなったけど。
帯に「最後にして最上の作品」とあるけど、私にはそこまでの感激も感動もなかった。

エリクソンみたいにしたかったんだろうな。
言葉でありながら言葉は言葉の形をとらずダイレクトに映像と化す、そういうような世界を描きたかったんだろうと思う。でもそうなりきらなかった感じ。
エリクソンはやっぱりすごいと改めて思う。

2013/09/07

『氷平線』桜木紫乃(文藝春秋)


ここから少し女流作家シリーズが続きます。
堀田善衛さんの『ゴヤ』の感想は追々載せます(今再読中)。
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さて、まず桜木紫乃さん。
私は結構好きな感じのトーンだった。
すべての話が北海道の村が舞台となっていて、そこに暮らす女性の姿が描かれている。

『霧繭』という話は着物の仕立て屋の女性の話で、私もちょうど長襦袢に半襟をつけるという作業が待っていたので印象に残った。
しかし、話として私が気に入ったのは『水の棺』と『氷平線』。
どちらも暗い。いや暗いというと語弊がある。閑寂(しん)として冷たいという方が近いのかも知れない。
北海道という土地の静けさと冷たさと、人間の命を飲み込むほどの厳しく美しい自然、そしてしがらみだらけの田舎で育った人間の特殊な性格が際立っていて、私はその2つの話が良かった。

2013/09/03

ハイ、またまた ちーちゃん です!


またまた姪っ子ちーちゃん登場です。

相変わらず可愛い♡

カメラの紐に手を伸ばしてます。
ぶらさがっている紐とか、かしゃかしゃ音のするものとかに興味津々です。


ごっつい笑ってます。 ピースしてイエーイ!って感じ(笑)


このポーズ、ちょっと女の子っぽいでしょ!


眠いの〜!でもうまく眠れないの〜! という大泣き。


お風呂上がりで上機嫌のちーちゃん。お風呂上がりはいつもご機嫌なんだって。
この日はいつもに増してテンション高めだったらしい(笑)
私といっぱい会話して大笑いして、私が離れると叫んで呼んでくれるの!(そんなことされたらおばちゃんますます可愛がっちゃいます)


生後5ヶ月で、むっちむちの時期。太腿がこんなに太くなりました!