多和田葉子さん、やっぱりいい。以前に読んだ『雪の練習生』も良かったけど、それとは全くテイストが違って、さらに良かった。
でもやっぱり装丁が勿体無いなぁと思う。作品はすごくいいのに、本の見た目ではその良さが想像できない。
さて、どんな内容なのかというと説明するのが難しい。
言葉と虎、という冒頭のキーワードで中島敦の『山月記』を思い出したが、しかしまるで違った。
人里離れた場所にある書を学ぶための学舎でたくさんの女たちと暮らす梨水という女性の話。
その学舎は亀鏡というカリスマ的な女性によって存在している。
その学舎は亀鏡というカリスマ的な女性によって存在している。
ここでは言葉から虎や鯉が出現し、女たちは言葉を操る。
梨水から発せられる声には不思議な力があり、彼女は思考がいつも十転する「飛魂」の心の持ち主でもある。
梨水、亀鏡、煙花、紅石、指姫、朝鈴、どう読んでいいのか分からない彼女たちの名前。
意味にとらわれないで受け止める言葉というものの力。
読みながら本の中の世界にふわふわと漂っているような心地になった。頭で物語を読むのではなく、ただ感じる。だから読んでいるという感じがしなかった。かといって映像的というのでもない。
理屈がなく言葉や文章が体の中を通り抜けていく感じ。
こういう本はなかなか無い。気持ちの良い本だった。