2014/02/23

舞台『アルトナの幽閉者』@新国立劇場


友人の西村君が出演する舞台を観に行って来ました。
上演後には初めて楽屋にもお邪魔しました。警備員さんがいるところを通ってパスなんかも出してもらって、なんかドキドキしました。ドキドキして当たり障りのない社交辞令みたいなことしか出てこず、たいした話ができずに西村くんには申し訳ないことをしました。

『アルトナの幽閉者』はサルトルが書いた作品。私は読んだことのなかったので、楽しみにして行きました。

主要登場人物は少なく、主人公フランツ(岡本健一さん)、フランツの父(辻萬長さん)、フランツの弟ヴェルナー(横田栄司さん)、ヴェルナーの妻ヨハンナ(美波さん)、フランツの妹レニ(吉本菜穂子さん)の5人。
岡本健一さんも美波さんも外人のようなキレイな顔だからぴったりです。

物語の舞台は第二次世界大戦後のドイツ。戦争帰りのフランツは13年間自分の中に閉じこもり部屋から出てこない。そこへ美しいヨハンナがやってきて、外へ出ることになる。そして・・・。
大富豪の一家。権力者の父、その父に庇護され壊れてしまったフランツ、フランツに嫉妬する弟、フランツを愛する妹。女優という仮面をかぶることをやめたヨハンナ。
そして生と死を見詰める戦争、ヒトラー、母国と個人、家族と個人。


感想は、まず、10代20代の思春期向きだなぁと、太宰治なんかと通ずるように思いました。
それから舞台の声で理解するよりもたぶん紙の上の活字の方がいいような気がしました。

一生懸命飲み込もうとしてものすごく疲れました。隣の女性は2幕目は寝てしまうし、前の座席のご夫婦は途中休憩で帰ってしまいました。
大きい音の苦手な私はひっきりなしの大きな声と音響の音で後半から頭痛と発熱を引き起こしました。

活字でゆっくり読んだら、心に引っ掛かり心に残るところがたくさんあるように思えたけど、舞台だと怒濤のように進んでしまってちょっと残念な気がします。
戦争はもちろん、生きるということ、事実と真実、社会、家族、自己、もういろんな深いテーマが盛り沢山なわけです。もうすごーい作品なわけです。

怒濤のように進むというくらい、出演者は大変だったろうなと思う台詞量です。
岡本さんはすごい熱演で、圧巻です。狂った人を演じるのは支離滅裂だから前後の繋ぎがなくて大変だと思います。コミカルなところも悲痛なところもとてもよく演じていて凄いと思いました。これを何回もやるのは大変だなぁとそんなことばかり考えてしまいました。
それから辻萬長さんの声がなんて素敵なんだろうと思いました。低くていい声なのによく通って、今回一番感動したかも知れません。とても70才とは思えない声です。


3時間半近い上演時間はちょっと長過ぎたように思います。長過ぎるという声をちらほら耳にしました。2幕目はつまらなかったです。最後もひっぱりすぎに感じました。
すごい作品だから脚本にするときに端折れなかったのだろうとは思いますが、演劇にするならまだ端折れるところはあったように感じました。要らないと思うところがたくさんあったし、台詞も真意はそのままに分かりやすく変えてしまっても良かったんじゃないかと思うところも多々ありました。
だから総評としては「うーん、、、」という感じです。
でも役者さんはみなさん素晴しかったです。本当にすごかったです。


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売店に『帰ってきたヒトラー』ティムール・ヴェルメシュ(河出書房新社)が売っていました。おもしろいと評判なので買おうかなと思ったのですが、上下合わせると3360円なのでどうしようかなぁと悩んで、優柔不断で貧乏な私は結局買えませんでした。