2011/09/20

『静かな日』中村昌義(河出書房新社)




先に読んだ『陸橋からの眺め』は少年時代の話だったけど、そちらの方が後に書かれたものだった。
最後のページに載っているその記述を見て私は「へぇ〜」と驚いてしまった。
『静かな日』は『陸橋からの眺め』と同じ主人公の30代から40代にかけての話だったから、すっかり『静かな日』の方が後なのかと思ってしまった。私は最も最初の作品となる「うずくまる闇」がいちばん好きだ。

『静かな日』収録3編
  静かな日    昭和51年8月号「文藝」
  うずくまる闇  昭和43年10月号「文藝」
  走る日     昭和50年4月号「文藝」

『陸橋からの眺め』収録3編
  出立の冬    昭和52年7月号「文藝」
  淵の声     昭和53年7月号「文藝」
  陸橋からの眺め 昭和54年3月号「文藝」

同じ主人公の話だなんて知らなかったから、続けざまに読むとかなりしんどかった。しつこいなぁと思ってしまった。
父が高級官吏で巣鴨プリズンに居て母が美しく(そしてマザコン気味で)5人兄弟で等々、同じ話しが何度も何度も出てくると、他の、小さな美しいものたちが私の内から消えてしまう。だから良かったのかそうでもなかったのかも分からなくなってしまう。
なんとなくこの人の作品は男の人向きな気がする。