2011/09/29

庄野潤三『プールサイド小景・静物』(新潮文庫)




村上春樹さんの『若い読者のための短編小説案内』という本に庄野潤三さんがあったので読んでみたいと思っていた。
そろそろ読む本が少なくなって来たなと思って(野見山暁治さんの『四百字のデッサン』と『うつろうかたち』はもったいないからまだ読まない)、近所の古本屋 " 赤い鰊 " に行ってみたら『プールサイド小景・静物』の文庫本があったので買った。
同じく『若い読者のための——』で取り上げられていた丸谷才一さんの『樹影譚』の単行本もあったので買った。


私は『舞踏』と『プールサイド小景』が良かった。
初めて庄野潤三さんを読んだのだけれど、60年前の川上弘美さん男バージョンだなぁと思った。

短編とかすごく短い文章を書くのがうまいところとか、
何でもない日常と何でもなくない出来事のバランスとか、
小物の出し方とか、
物語の終わり方(ついついもう少し書いてしまいたくなりそうなのにスパッと終わらせてしまうところ。「え? 先はないの?」と目をぱちくりしてしまう終わり方なところ)とか、
全体的に文章の作り方とか描写の仕方が似ているように感じた。

とはいえ、似ているのに心に届く感じは全然違う。それは現代のものと昔のものとの違い。
私は古い作品の方がしっくりくる。いいなぁと思うし好きなものが多い。

どうしてそうなのかは正確には分からないけど、古い作品の方が風景が美しく感じる。瑞々しい。空気も澄んでいてゆるりと柔らかい。静謐な美しさ。いい絵画みたいな雰囲気があると思う。
でも現代の作品は違う。どんな作品であれ空気に光化学スモッグが混じっているような感じがする。カサカサしたものを感じる。いいなと思ってもそれは映画だったりデザインの雰囲気になる。
私はそんな風に感じる(あくまでも私の感じ方として)。