「人生って、自分の中で最も商品価値のあるものを切り売りしていくプロセスのことでしょ。知性にしろ、才能にしろ、カリスマ性にしろ、美にしろね。」 ( p43より抜粋 )
『黒い時計の旅』を書いたスティーヴ・エリクソンの『真夜中に海がやってきた』を読んだ。
この作品は『黒いー』よりも、一般的に表面的にいえば、ずっと読みやすい。私は止められなくて、しなくてはいけないことを後回しにしてずんずんと読んでしまった。とても興味深かったし、すごくおもしろかった。
人生における信仰(信念)、生と死、終わりと始まり、男と女、親と子、世界共通の誰にもあるあらゆるものを含んだ話だと私は思う。東京歌舞伎町から始まり、アメリカ、イギリス、フランス、様々な国と場所が出て来る。世界中の歴史や歴史的事件も出て来る。人種も様々だ。
アポカリプス(黙示)のカレンダーに翻弄される居住者と、アポカリプスの地図に取り憑かれるカールと、カオスとアポカリプスの中心である夢を見ないクリスティンと、居住者とクリスティンに繋がるその他大勢の登場人物たちが、複数の視点からあらゆるものを含んだ人生について語り、"覚醒の瞬間"(別の言葉で言うとミレニアムないしは夢)を経て自らを救済しようとする。
無駄な文章なんてひとつもないくらいすべての文章がすべての文章に繋がっているような作品だった。
エリクソンは天才だと思う。