2013/04/27

『海景暮色』青山光二(新潮社 / 1993)

1986年10月号の「新潮」に掲載された『海辺の記憶』から1992年9月号「文學界」に掲載された『因島再訪』までの5篇と《えぴろぉぐ》が収められている。
5篇といってもそれで1篇になっているので短篇ではなく長編と呼べるだろう。

最初の『海辺の記憶』は、絵画の話から始まりいつのまにか家族の話になり愛人の話になり、あまりの詰め込み過ぎ感に参ってしまった。
私は読みながら勝手に流れを想像してしまう。
主人公が自分の幼少期の自画像を見に行く話で始まると、その話が自然とふくらんでいくのだろうと思ってしまう。
ところが全くそうならず、しかし最後には繋がってうまくまとめられてしまう。
だから「アレレ?」となる。

1冊読んで、何冊も読んだような気分になった。
ストーリーと構成がよく考えられていて(しかし私にはそれがあまりにもリンクづけされ過ぎているように思う)、よく出来ているなぁという印象はあっても、串田さんや島村さんの作品のようにいい作品だなぁという感想にはならなかった。

その部分その部分はおもしろいし、共感したり、いい文章もたくさんある。それでも私はなんとなくやっぱり、詰め込み過ぎ、細かくリンクづけし過ぎ、という印象の方が強く残った。