2015/05/08

『ブルース』桜木紫乃(2014年/文藝春秋)



エロ描写が多いけど、桜木さんらしい空気感はそのまま。
こういう『繋がりのある短編小説』を書くのが桜木さんはうまい。
ひとつひとつは微妙かもしれないけど、全体の繋がりでみると「うまいなぁ」と、思う。

ひとりの男とその男に関わったたくさんの女たち。

自分も誰かの物語の一部なんだよな。


読んでいて色々な個人的なことを思い出して苦しくなって悲しくなって勝手に涙が出た。

沢山の女性と付き合ってきたセックスの巧い男性のことや、昔付き合っていた男性のことを思い出して、恋しくなって悲しくなって苦しくなって一度涙がぽろりと零れたら止まらなくなってわんわん泣けてしまった。
雪山で自殺するイメージやセーヌ川やドナウ川で身投げするイメージが離れなかった。

物語の内容にというのではなく、桜木さんの文章が醸し出す暗さや孤独感みたいなものに、私の心がすっぽりと取り込まれてしまったんだと思う。

相変らず冷たくて閑散とした世界だった。湖に浮ぶ月みたいな小説。
やっぱり桜木さんの小説は好き。私に合っていると思う。
私が描きたい世界の文章版。

この装幀は小説のイメージに合っていると思う。
こんな感じのモノクロームが似合う感じ。
人のいない駅のホームというのは内容に沿ったモチーフ。


人生の断片でありひとりの人生の記録である小説。