2015/08/31

山田稔『天野さんの傘』編集工房ノア・2015年7月発行


やっぱり山田稔さんの文章は読みやすくて好きです。
老人のエッセイという部類で考えると、庄野潤三さんよりは堅く、串田孫一さんよりはくだけた感じ。私の中では洲之内徹さんと山田稔さんは同じ匂いがします。

私は自分がじめっとしている分、からっとした男性的で、クールで、客観的な文章が好きです。
山田稔さんの文章は、「ちょうど良い塩梅」だよなぁといつも思います。
庄野潤三ほど女っぽくなく、串田孫一ほど堅くなく、長谷川四郎ほど線が細くなく、洲之内徹よりは近しい感じがし、室生犀星のような飄々としたところがあり、外国文学の良いところも感じ、エスプリとニヒルとドライのスパイスも多からず少なからずのいいバランス。

山田さんはいいとこどりの文章を書く人だと思います。
そんな山田稔さんの文章スタイルが出来上がる元となった話などが書かれていてとても興味深く読みました。

どの話も興味深く、胸に残る文章でした。

装幀も好きです。装幀は林哲夫さん。



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本書に書かれていた作家や作品のメモ(追々読みたい。読んでいない人や知らなかった人など色々)


生島遼一 随筆集『鴨涯日日』『鴨涯雑記』 エッセイ集『水中花』 翻訳(フランス文學)『クレーヴの奥方』『赤と黒』『感情教育』

伊吹武彦 『ベレー横町』

黒田憲治 翻訳 ポール・アルブレ『伝記スタンダール』 ゾラ『居酒屋』

松尾尊允『中野重治訪問記』

シャーウッド・アンダスン『女になった男・卵』

クロード・モルガン『人間のしるし』
ヴェルコール『海の沈黙』
アグネス・スメドレー『女一人大地を行く』
丁玲『シャーフェイ女史の日記』
パール・バック『黙ってはいられない』