2010/09/13

『海炭市叙景』佐藤泰志


クレインから出版されている『佐藤泰志作品集』を少しずつ読んでいる。
佐藤泰志はもうこの世にいない。1990年に41歳の若さで自ら命を絶ってしまった。
村上春樹と同い年だということ、そして生きていたらまったく違うタイプでライバルになっていたかも知れないというコメント、さらに私の大学の先輩であること、等々の理由で読んでみたくなった。

最初に収められているのは『海炭市叙景』。
読み始めて、佐藤泰志いいなぁと思った。ちょっとシニカルでブラックで現実的で、でもそれだけじゃなく優しさに似た暖かみもあって、私は結構好きだ。淡々とした文体もいい。
いくつもの短編から成っているのだが、それぞれの短編は海炭市という細い糸で繋がっている。
海炭市に暮らす様々な人々の様々な生活とその思いが描かれている。
ただの日常の一コマ。人生の中のたった一日の数時間や数分の出来事を描いているのに、それだけでその人のすべてを表現してしまう。
とても素晴しい作品だと思う。そしてすごい作家だと思う。

映画化されるので映画もちょっと気になる。
http://www.cinemairis.com/kaitanshi/

『佐藤泰志作品集』クレイン
http://www.amazon.co.jp/佐藤泰志作品集