2011/11/26

田中小実昌『ポロポロ』『香具師の旅』(河出文庫)



田中小実昌ってブコウスキー系なんだ(大きく言えば、だけど)。読んでみてそう感じた。


 『ポロポロ』『香具師の旅』、どっちがおもしろかったか決められない。
 話の内容、つまり物語という点では『香具師の旅』の方がおもしろい(と私は思う)。
 『ポロポロ』は最初の『ポロポロ』以外は戦争に言った時の話。物語としては戦争体験記。
 だけど、ただの戦争体験記ではなく作者の視点が独特で、文調も独特で、好きな人は好きだし、こういうのこそ文學だ!という人もいると思う。
 私はそういうのとは別で、後半の、<物語>というものについての持論はすごくおもしろいと思った。文章が<物語>にならないように、と意識して書いている。あるものをあるがままに、出来事を出来事として、<物語>にはしたくないんだと言いながら物語を書いている。そういう矛盾撞着的なところが興味深かった。



::::: 余談 :::::

 先日、法事で実家に帰った時、私は『香具師の旅』を持っていて、それを見つけた叔父が「田中小実昌なんて読んでるのか! 今時、田中小実昌を知ってるやつなんているのか?」と、なぜか大ウケされた。
 叔父は私が案外もういい年だってことを忘れているのかも知れない。
 叔父の年代(叔父は見た目が40そこそこだからいつも年齢が分からなくなるのだが、たぶん55歳くらい)では、田中小実昌さんは誰でも知っている有名人だったみたいだ。 叔父の持つ田中小実昌イメージと、私が持つ田中小実昌イメージとはまるで違う。
 叔父のイメージは11PMに出てた田中小実昌で、私のイメージは野見山暁治さんの義理の弟、風変わりな、俗っぽいのだけれどそれを極めた感じのする物書きとしての田中小実昌。
 それぞれが持つイメージの相違ということについて不思議だなぁと思った。色々なことをぼんやり思った。私はぼんやりと思っただけだけど、ぼんやりじゃなくて掘り下げてもおもしろそうだ。