2014/01/10

『読書画録』安野光雅(講談社)


読んだ本のイメージを絵にしているのではなく、作品もしくは作家に関係ある場所の現在の風景をスケッチしている。
たとえば、樋口一葉の『たけくらべ』には「旧吉原大門あと松葉屋の脇をながめたところ」、
表紙の絵は梶井基次郎の『檸檬』に添えられた絵で、
「京都三条と麩屋町の交わったところ、絵の左手前の方角にもと丸善があった。『檸檬』の余韻を求めてここまでやって来た人は、さぞ多かったことだろうと思う。」とある。

出不精の私は作品に登場する場所へわざわざ行きたいと思うことは滅多にない(浅草にはちょっと興味があるけど)。
だから読書感想に添える絵として場所のスケッチという発想が出てこなかった。
添えるとしたら、装丁にあるような「内容のイメージ」を描くというのしかなかった。
でも、安野さんのスケッチを見ると、こういうのもいいなと思った(まぁそれは安野さんのスケッチだからいいのだとも思うけど...)。


自分の尊敬する人の読書感想、とくに安野さんのように素晴しい画家さんの読書感想は興味がある。
どんな本を読んでどんなことを感じたのか。
期待が高かった分、この本はちょっとだけ拍子抜けした。
作品の説明で大半を占めているものが少なくない。そしてすべて3ページで収めているからさっぱりし過ぎて物足りなさを感じた。
さすがに『檸檬』は画家としての安野さんの心持ちが書かれていたけど、他は概要のような紹介のような印象がした。

それでも、読んだことのない本ばかりが紹介されていて読んでみたいと思った。