2014/01/31

『ぬいぐるみの鼠』中村昌義(河出書房新社)

「あぁ」と、声にならない声が体に満ち、吹きさらしの荒野にひとり取り残されたような気分になった。

死を目前にした作家の文章はおだやかでやさしい。
そしてそのおだやかさややさしさは哀しみを誘う。
どの随筆も静かで真っ直ぐで哀しい。

すべて死に関係していたり連想させるような文章で、その中にはいつか消えてしまう儚さを持つやわらかなあたたかさがある。

ふわふわと天から舞い落ちる雪のような、またその溶け始めた輝く結晶のような、
愛おしい子供の小さな手の温もりのような、
そういう印象が残った。

本当にいい本だった。かなり好き。大事にしようと思う。

中村さんの単行本は『ぬいぐるみの鼠』と『静かな日』と『陸橋からの眺め』の3冊しかない。
他2冊も読み、日記に感想を書いているはずだが内容はあまり覚えていない。
他2冊のことを覚えていないけれど、この『ぬいぐるみの鼠』が中村さんの本の中で一番良かったように思う。
久しぶりにいいなぁと思う心に沁みる本だった。
他2冊ももう一度読み直してみたくなった。