2010/12/25

『愛人 ラマン』マルグリット・デュラス(河出文庫/清水徹訳)

これが流行ったのはいつだっただろう? あまりにも流行り過ぎて読むタイミングのなかった本。
今回、何故今さら読むことにしたのかというと『愛人』と『北の愛人』を続けて読むといいよ、と人から聞いたからだ。

デュラスの作品自体一冊も読んだことがないから、初めはその文体に戸惑ってしまった。いかにもフランス風だと思った。読み進めていくうちに、あれよあれよとあっという間に読み終えてしまった。

そして、全然愛人の話じゃないじゃん! ていうか愛人(あいじん)じゃなくて愛する人って意味なのか!とびっくりした。
あんなに流行ったのに何故か間違った認識でいた自分にびっくり。

当初思っていた、少女と中国人の男についてはそれほど書かれておらず、家族のことが殆どを占め、残りはフランス人作家らしい、あらゆる方面へ飛び移る文章たち、隠喩的な描写、空想的かつ幻視的な描写が占めている。

でも、作品として内容として、流行ったのは分かる。心地良い文章に、美しい女性と歪んだ家族というモチーフ。そういうのって好きな人は多いと思う。
私は苛立ちにも悲しみにも似た暗い気持ちになった。文章も作品も素晴しいと思う。でも私にはどうしてだか苦し過ぎた。