2011/02/22

平野啓一郎『葬送』とショパンの曲

ショパンの曲は、夜が似合う。

音は初夏のそよ風か美しい森を流れるせせらぎのように繊細で軽やかなのに、多くの曲の調べが切なくて物悲しいからかも知れない。

それにしてもショパンの曲は本当に美しい。。
『葬送』を読むとその素晴しさと美しさが更に一層心に沁みてくる。

情緒不安定の、脆弱な心に、ショパンはするすると流れ込んで来る。
私の全部をすっかり覆い包んで現実から乖離させる。
何も考えさせてくれず、ただ美しい調べが心を包み込む。
私は、その、宇宙のような音楽に飲み込まれて、涙を流す。

ショパンの曲なら辻井伸行くんのピアノが最も合うと思う。
辻井くんのピアノの音色は本当に柔らかく澄んでいて美しい。
あまりに繊細で透明で純粋で、私はその音色で泣けてしまう。
たった1音で、指が鍵盤に落とされて生まれるその瞬間に、その音色の素晴しさは分かる。
だから辻井くんがショパンを奏でるとショパンの音色もきっとこんな感じだったんじゃないかという気がする。

小学生でピアノを習っていた頃、その教室にずっと年上のピアノの上手なお姉さんがいて、私はよくそのお姉さんにショパンの子犬のワルツや別れの曲を弾いてもらっていたのを思い出した。
よくよく思えば、私はショパンの曲に好きなものが多い。
幻想即興曲も、葬送行進曲も、子守歌も、英雄ポロネーズも、革命のエチュードも、ノクターン作品9の2変ホ長調も、作品18番のワルツも、どれもいい。
今とくに気に入って聴くのは、作品64番の2嬰ハ短調のワルツ、ノクターン第20番嬰ハ短調、ノクターン作品9の1変ロ短調、マズルカ作品59の3嬰ヘ短調、前奏曲作品28の4ホ短調

私はピアノの才能がまるでなく結局ピアノをやめてしまったけど、今更ながらにショパンの曲が弾けたらどんなにか素敵だろうと思う。