2013/06/04

『ボートを漕ぐもう一人の婦人の肖像』辻征夫(書肆山田)


辻さんは詩人だが、私は詩が苦手なので辻さんの詩も読んだことがない。
だから詩の辻さんのことは分からないが、小説の辻さんは良かった。好きになった。

この本は詩集のように、天地に余白がたっぷりあり、文字も大きく、ひとつひとつが短い。
絵本のようなおとぎばなしのような、ちょっと不思議な話たちが9篇収められている。

私はその中でもめちゃくちゃ怖い『砂場』が好き(というかいちばん印象に残っている)。
短いから怪談を聞いたような感じになった。
怖いんだけど、なんかちょっと切なくて悲しくて不思議でいい。

でもどれも良かった。
詩人だからか、文章に空気がある。間や空間もある。ふんわりとした感じの柔らかさがある。そういうのがすごく良かった。